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「嫌いな人」は成長をもたらしてくれる存在

家電製品の製造工場に勤務するNさん(35歳)は、部下で年上のFさん(41歳)との人間関係に悩んでいました。

 

Nさんが班長を務めるグループにはFさん以外に部下が4人いて、彼らは何ごとにも積極的で意思疎通も円滑。Nさんも大きな信頼を寄せています。

ところが一番年上のFさんは、指示された仕事はするものの、それ以上の成果は目指さないし、同僚たちが忙しくしていても無関心で、手伝おうともしません。そんなFさんの口癖は「自分は忙しいから、これ以上はできない」「そんなことは聞いていないから、やれない」で、Nさんは「後ろ向きな部下は扱いにくい」と感じていました。

 

もちろんNさんは立場上、「Fさんの仕事に対する姿勢を改善させる責任がある」と思っていました。人員に余裕があるわけではなく、Fさんにもしっかり仕事をしてもらわないと他のスタッフの負担が増してしまいます。

 

また、現状の人員で生産性を高めることが会社の増収増益につながり、それが自分たちの給料に影響することも理解していました。ただ、Fさんは年上であり、注意するとFさんの機嫌が悪くなって、仕事がやりにくくなるかもしれない。結果的に生産性が落ちる恐れもあるため、Fさんにハッキリと言えずにいたのです。

 

とはいえ、このままでは一所懸命に働いている他の部下のモチベーションにも悪影響を及ぼします。やる気のある部下が退職してしまえば元も子もありません。そこで、工場長にFさんの件を相談したところ、「やっぱりダメか。Fさんには辞めてもらうか」と、解雇の話題になってしまいました。

 

 

 

仏教に「戒法の受持」というものがあります。

もともとは、仏教の教団に入るときに受ける戒律としての法を心に刻んで忘れないこと。つまり、「つねに仏の教えに導かれて自らの行動を律するように心がける」ことです。これによって、慈悲の心に基づいた人間としての正しい生き方が確立するとされています。

 

これを現代に置き換えるなら、「自分自身が少しでも幸福になり、少しでも周囲と調和を図っていくために、自分の戒律を一つ定めて習慣化する(遵守する)」ということでしょう。

例えば、Aの出来事に毎回Bの対応をして失敗してしまう人は、次にAの出来事が起こったらCの対応をしようと自分で戒律を決めておく。そうすることでトラブルが起こりにくくなります。

 

転職して新しい職場で良好な人間関係をつくりたければ、職場の人たちが何をしたいのか、何をしてほしいのかを観察して、こうすれば信頼されるだろうと思われることを一つひとつ実践していくことが大事です。

 

率先して仕事を手伝ったり、わからないところは積極的に質問することで、自分がどういう動きをすればいいのかを学んでいく。その動きが期待されていることとズレているとわかったら、動き方を変える。それの繰り返しで、徐々に新しい職場での信頼を得られるようになります。

 

Nさんは「Fさんに辞めてもらって、もっとやる気のある若いスタッフを採用したらずいぶん仕事がやりやすくなるだろう」と思いました。しかし、「人の入れ替えだけでは根本的な問題解決にはならない。

Fさんとの関係において自分なりの教訓を得ておかなければ、また同じようなことで悩むだろう」と考え直したのです。

 

Nさんは、Fさんとのコミュニケーションの取り方を改善することにしました。

Fさん以外の4人はTさんの指示を忠実に受け止め、仕事ぶりも積極的でしたから、Fさんにも同レベルの仕事を「当たり前」のように期待していることに気づいたのです。

 

Nさんは「自分の当たり前と相手の当たり前は違う。自分の当たり前を押しつけてはいけない。まずは、相手の当たり前を理解しよう」という「自分への戒め」をつくりました。そして、他のスタッフとは違う伝え方でFさんを指導していくことにしました。

 

それまで、やるべき日々の作業内容を口頭で伝えていたものを、ホワイトボードに書き出すようにしました。スタッフ一人ひとりが担当する仕事を、お互いに確認するためです。さらにFさんには「Fさんのお陰で仕事が進んでいます。ありがとうございます」と、承認と感謝を伝えるようにしたのです。

 

すると、少しずつですが、以前に比べてFさんの仕事に対する姿勢が前向きになってきたそうです。Fさんから「何か手伝おうか?」と言ってくるようにもなり、結果的にTさんの自信にもつながっていきました。

 

 

生活していれば、どうしても「合わない」とか「嫌い」と感じる人とも出会わざるを得ません。仏教では「怨憎会苦」(怨み憎しみ合う者同士が出会ってしまう苦しみ)として、生きる上で必ず出会わなければならない苦しみであるとされています。ですから、自分と気の合う人や愛しい人とだけしか会わない人生はあり得ないのです。

 

「合わない」「嫌い」と感じる人からは、何も聞きたくないし何も学びたくないとなりがちです。しかし、そういう人たちだからこそ、コミュニケーションの取り方を学ばせてもらえます。一方的な思い込みを改善してくれます。Tさんのように、口で伝えるだけではなくホワイトボードに書き出して伝えるという工夫を生み出すことにもつながります。

 

つまり、「合わない人」「嫌いな人」は、自分に成長をもたらしてくれる存在として目の前に現れてくれたのだと、考え方を変えるのです。考え方や価値観が似ている人とばかり過ごしていては、世界観が狭くなります。自分と対極にある人にこそ、学ぶべきことが多いものなのです。

 

苦手な人との人間関係にただ苦しむのではなく、その出会いを通して教訓を一つでも得られるように心がけていくほうが、よりお得な人生になります。

 

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