「なかなか売り上げが上がらない」「収入が増えない」お金の悩みを抱える人へ自益益他
2015年07月02日
中小企業白書2014によれば、自営業主の個人所得は年々減少し、直近の2012 年では100 万円未満が3 割超、200 万円未満が5 割超を占め、300 万円未満になると実に7 割を占めています。
このように、独立・起業して自分のやりたい仕事で自己実現することを目指して一歩を踏み出したものの、なかなか売り上げが安定せず、経済的に厳しい状況が続いてしまう自営業主・起業家が多く、私のところへもそうした方々の相談が増えています。
例えば、起業して3年目を迎えた生命保険の代理店をされているAさんの場合、起業してからの2年間は前職でつながりのあったお客様や身内を訪問して保険の営業をかけることで成果が上がっていたのですが、だんだんと訪問できるところが減っていき業績が悪化。なかなか売り上げが上がらないお金の悩みを抱いていらっしゃいました。
そこで、私は仏教の「縁起の理法(原因と結果の法則)」に基づいて、Aさんに結果として与えられている「業績の悪化、売り上げが上がらない」の原因をAさんと一緒に探究しました。
仏教では、善因善果(善い原因をつくれば、善き結果がもたらされる)・悪因悪果(悪い原因をつくれば、悪い結果がもたらされる)という教えがあるので、Aさんは「自分には今、悪い結果が与えられている」と実感されているということは、「Aさん自身がこれまでに悪い原因をつくってきた」と仮説が立ちます。
要するに、Aさんが今、苦しんでいるのは、決して他の誰かのせいでもなく、環境や時代のせいでもなく、Aさん自身が自分を苦しめる種を蒔いてきたことが原因であると考えられるので、
「業績の悪化、売り上げが上がらない状況を招いた原因が、Aさんご自身のこれまでの仕事のやり方や働く動機にあるのかもしれない・・・」
と考えながら、Aさんが起業してから今日に至るまで、どのような仕事のやり方を選択されてきたのか、何を動機に働かれてきたのかなどをじっくりお聴きしました。
すると、
◆ 売り上げが上がらない不安が大きく、どうしたらたくさんの契約を獲得できるか考えるなど、新規顧客を獲得することを動機に仕事している。
◆ 今まで契約してもらった既存の顧客に感謝して、「その後、いかがですか?お困りのことはないですか?」のようなアフター・フォローをした方が良いとは分かっているけどなかなか余裕がなくてできていない。
など、Aさんの仕事のやり方や動機のパターンは分かってきました。
私は、仏教の「自益益他」の実践がAさんの悩み解決に効果的だろうと考えました。
これは、「まず自分を成長させて、ますます他人の利益に貢献できるようになっていき、結果的に両者が幸福になっていく」という教えです。
経済的な悩みがあると、ついつい
「どうしたらお金をもっともらえるようになるか?」
「見込み客に買ってもらうにはどうしたらいいか?」
のような「もらう思考」になりやすいかもしれませんが、仏教の教えはその逆で、
「もっと与えられる自分になるにはどうしたらいいか?」
「もっと他の人の利益を増やせる自分になるにはどうしたらいいか?」
を考えて、そうした自分へ変化・成長していく努力を続けるのです。
もらう側・奪う側であると、結果的に与えられないのです。
しかし、与える側であると、結果的に与えられるのです。
Aさんは売上を上げたかったので、お客様からお金をもらうこと、見込み客を獲得することを目的に仕事をされてきたようですが、それが結果的にお金の悩みを大きくさせて、見込み客をなかなか獲得できない状況を招いていたのです。
人間の言動の9割以上は無意識で行われていると言われています。表面的に「お客様に喜ばれるように仕事している」と言っていたとしても、心では「この人から保険の契約を獲得するにはどうしたらいいか?」を意識している場合、見込み客との信頼関係を十分に気づくことは難しいかもしれません。
また、自分の利益のことばかりを考えてしまっていたがために、すでに契約して頂いている既存顧客のフォローアップへの優先順位が下がってしまい、既存顧客がリピート客になることや既存顧客からの紹介・クチコミで新規顧客とのご縁を頂く可能性を自らのがしていたのかもしれません。
Aさんは「見込み客や既存顧客の立場になって考えてみると、自分の仕事のやり方や働く動機がお客様に逃げられやすいものだったな…」と気づかれ、売上アップを大切にしながらも、見込み客や既存顧客からもっと信頼されて慕われる保険の担当者になっていくことを目指して、例えば以下のような方針をつくって活動されていて、現在は事業が軌道に乗ってきています。
◆ 購入してもらったら与えるのではなく、まずは自分から与える。これまでに得てきた知識や経験をフル活用して、縁ある方々やこれからである人たちに、まずは自分から情報提供していく。
◆ 異業種交流会で出会う人脈から仕事をもらおうとするのではなく、むしろ、彼らが求めているものを得られるように応援していこう。
◆ 既存顧客を定期的に訪問したり、電話でアフター・フォローすることで、安心を与えていこう。
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